司法書士や弁護士に頼まず、自分で相続放棄をすることができるかについて、ひとことでいえば、相続発生してから、相続放棄を申し立てるまでの事情次第ということになります。
この項では、相続放棄について、私なりのまとめを掲げておりますので、ご自身でできるか、するのかのご判断の一材料にして戴ければ幸いです。
尚、このホームページで提供しています情報について、「免責条項」を定めていますので、ご利用される場合は、必ずお読み下さい。
さて、事情次第と申し上げましたが、いくつかの類型に分けられると思います。ここでは以下の通り、分類して話を進めます。
法定単純承認事由(※)はない | 法定単純承認事由(※)がある | |
相続後、3か月経過していない | A1 |
D |
相続後3か月超だが、自己が相続人であることを知って3か月以内 | A2 | D |
相続後3か月超、自己が相続人であることを知って3か月超だが、特別な事情がある | B | D |
相続後3か月超、自己が相続人であることを知って3か月超、特別な事情がない、もしくは特別事情はあるが、それを知って3か月超。 | C | D |
※法定単純承認については「法定単純承認」をご覧ください。
●A1は、手続きに大きな落ち度がない限り、相続放棄は認められるでしょう。
●A2は、自己が相続人であることをいつ、どのように知ったのかを具体的に示せるかどうかがポイントですが、まず問題ない類型です。
●Bゾーンは、相続財産の認識可能性と、当該相続人と相続人との生前におけるかかわりあいの程度がカギを握りますが、十分可能性があります。
●Cゾーンは、事案の慎重な検証が必要だと思われますが、認められる可能性は高いとは言えないでしょう。
●Dゾーンは、法定単純承認事由が認められる限り、相続放棄が認められる可能性は、ないと言えます。 (ただし、法定単純承認事由のとらえ方に注意を要します)
自分で相続放棄をしようと思う方は、まず上の表の「法定単純承認事由」があるかどうかを見極める必要があります。
法定単純承認事由がなければ、これからもその事由が生じないように注意することです。法定単純承認事由がすでに存在する方は、本当に存在するとご判断された事情が、法定単純承認事由に該当するのかを専門家にご相談されるのが良いと思います。
次に、上表のAゾーン(A1,A2)から、話を進めます。
事情 | 区分 |
法定単純承認事由がなく、かつ相続発生後3か月以内 |
A1 |
法定単純承認事由がなく、相続後3か月超 ただし、自分が相続人であることを知って3か月以内 |
A2 |
A1は、相続開始後、3か月経過していなくて、法定単純承認事由がない場合です。
明らかにマイナスの財産のほうが大きく、相続開始後3か月を経過しておらず、かつ、何も相続財産は処分していない場合です。
このような場合は、相続放棄の申立までに、法定単純承認事由に該当するような行為に注意し、速やかに申立てることが重要です。
ただし、相続放棄は、プラスの財産よりもマイナスの財産のほうが大きいときにとる手続きですから、プラスの財産とマイナスの財産が、ある程度明確に把握できることが必要となります。
プラスの財産とマイナスの財産のどちらが大きいのか、不明な場合は、3か月の期間を延長することも可能です。
そして、延長期間内にプラスの財産とマイナスの財産を調べることになります。